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木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明方法に関する提言
平成21年3月30日 違法伐採総合対策推進協議会

1 はじめに

平成18(2006)年から概ね3年の間、グリーン購入法の下で合法性、持続可能性が証明された木材・木材製品(以下「合法木材」という。)を優先的に購入するとの政府の方針を契機として、木材業界を始めとした関係者は違法伐採木材を排除する国際的な動きに呼応し、林野庁が作成した「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)に基づいて「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明」に取り組み、一定の成果を上げてきた。

業界団体の認定を基礎にした事業体による合法性証明の連鎖を作り上げる方法は、効率的で広く普及可能なシステムとして海外からも注目されてきた。

また、累次の国際シンポジウムのサマリーステートメント1)や円卓会議における基調講演2)の中で、Goho-wood の取組として集約され、今後のさらなる発展に向けてのメッセージとともに、世界に向けて情報発信がなされてきたところである。

一方、これまでの取組と関連する調査 3),4)を通じて、合法性、持続可能性の証明の信頼性を向上させるためにはどうしたらいいか、また、合法性、持続可能性の証明がなされた木材・木材製品の利用をさらに拡大するためには何をする必要があるのかなど、いくつかの課題等も浮き彫りになってきた。

このため、平成20(2008)年6月に違法伐採総合対策協議会証明方法検討部会の下に、「『今後の証明方法のあり方検討』小委員会」を設置し上記の成果を踏まえ、@合法性、持続可能性の証明方法、A需要者側への証明制度の普及と証明された木材・木材製品の利用推進方策、B供給者側への証明制度の定着と証明された木材・木材製品の安定供給方策の3つの課題について主として技術的な検討を行ってきた。この提言書は、その結果を基に行われた証明方法検討部会の議論を踏まえ、木材製品の合法性、持続可能性の証明方法に関する現状認識と今後の課題をまとめ、国等の関係行政機関を始め木材供給者、需要者等に対する提言として違法伐採総合対策協議会が取りまとめたものである。

2 合法性、持続可能性の証明方法について

(1) 合法性、持続可能性の定義
ア)合法性の定義
(現状認識)

ガイドラインでは合法性は「伐採に当たって原木の生産される国又は地域における森林に関する法令に照らし手続が適切になされたものであること」と定義されている。検討の過程で法令の対象範囲を明確・詳細に記載すべきとする意見も出されたが、現時点では現在の定義を変更すべきとの結論には至らなかった。

ただし、この定義を具体的なケースに当てはめていく場合、国産材の場合には普及用パンフレットやQ&A の形での@保安林、A施業計画が作成されている民有林、Bその他の民有林、C国有林という4つのケースに分けた明解なチェックリストが公表されてているが、輸入材の場合は、個々のケースに対応した合法性証明についての情報が十分に提供されていないとの指摘があった。

(提言)

取組開始以来、蓄積されてきた各国の様々な法令や事業の実態を活用、整理し、合法性をチェックするためのチェックリスト(Q&A)の充実を図るべきである。

イ)持続可能性の定義
(現状認識)

現在のガイドラインでは持続可能性は「持続可能な森林経営が営まれている森林から産出されたものであること」とされているが、実務的に利用可能な判断基準とはなっていない。

持続可能な森林経営の定義については、国際的にも様々な議論があり、統一した具体的な定義を確定するには困難な面があるが、一方で、日本の政府調達政策における持続可能な森林経営の定義を明確にすることは重要な意味を持つものである。なお、国産材の場合、日本の法令に応じて合法性が証明された場合、持続可能性が確保されていると言えないのか、さらに検討する必要がある、との指摘があった。

(提言)

@国連森林フォーラム(UNFF)、モントリオールプロセス、国際熱帯木材機関(ITTO)など国際的な議論も幅広く踏まえた上で、今後持続可能な森林経営の定義の明確化に向けて検討をすべきである。

Aまた、@の結果に基づき、国産材も含めた各国の様々な法令や事業の実態に応じて、持続可能性が分かりやすく判断出来るチェックリスト(Q&A)を作成すべきである。この場合、証明方法の実務上の実行可能性を勘案しながら検討をする必要がある。

(2) 証明方法の信頼性向上につながる方策
(現状認識)

短期間に全国各都道府県に7000 を超える認定事業体ができたことは、全国どこでも合法木材調達が概ね可能となったことを示すもので、これまでの取組の重要な成果であると言える。一方で、システム全体を考えたときに、どこでどんな認定団体が活動しているか全てを把握できる体制にないのは問題であるとの指摘があった。

また、認定事業体が発行した証明の中には、理解不十分のため、しっかりした根拠がない証明書の例も一部に見られた。

さらに、木材、木材製品は様々な用途に使用されており、複雑な建材の流通ルートを考えた場合、いわゆる木材業以外の流通業者(最終的な納材業者を含む)が木材、木材製品を含む建材の流通に重要な役割を担っているケースも多く、「業界団体認定」という仕組みだけでは、木材・木材製品の流通をすべてカバーできない面がある。

(提言)
ア)証明方法の信頼性向上につながる運営上の努力

現在の合法木材供給事業体の集団をベースに置いた、今後の展開が必要であり、そのためには、一定のモニタリングを実施し、それに応じた研修の実施など指導普及を体系的に行い、信頼性を高めていく運営上のさらなる努力が必要である。

イ)証明方法の信頼性向上につながるシステムの導入

上記の課題を念頭におくと、次の機能を持たせるため、認定業務の管理システムの導入を検討する必要がある。

@認定団体・企業独自の供給体制の把握、管理
認定団体・企業独自の取組の登録(登録のための基準、手続き)、情報開示、モニタリング、監査など
A認定団体・企業独自の供給体制への情報提供・啓発

事業体担当者の研修、ガイドラインの解釈についての解説など

なお、今後、第三者性の担保と効率性の維持のバランスをどのように取るかについても考慮の上、検討を進める必要がある。
ウ)木材業以外の関係業界の参画の促進

木材業以外の建築材流通業などの参画などのため、企業独自の供給体制が幅広く活用される必要があり、このため関係業界に広く合法木材供給システムについての理解を普及する必要がある。

(3) コストの削減につながる方策
(現状認識)

国産材では合法証明の出発点となる伐採時の証明書発給に関して、伐区が小規模で分散している場合、大変手間がかかる状況となっている。また、分別管理が負担となるため、今のところ合法木材の供給に常時取り組めない事業体が多く、後追いの証明となっている例も見られる。

(提言)

@流通過程の負担を減らしていくためには、原料供給のほとんどが合法木材として供給出来る体制をなるべく早く構築することが必要である。そのため、a 国産材については国、地方自治体がまずは合法木材の供給に関し、積極的な対策をとる必要があり、b 輸入材では輸出国側へガイドラインに基づいた合法性証明木材の供給についてねばり強く要請していく必要がある。なお輸出国への対応については特に政府ベースの働きかけが重要である。

Aまた、中小企業の認定作業をサポートするためには、流通の中心となる事業者の役割が重要であり、当該事業者によって企業独自の取組が十分に活用される必要がある。

3.需要者側への証明制度の普及と証明された木材・木材製品の利用推進方策について

(現状認識)

国や地方自治体で合法性が証明された木材・木材製品の調達が進みつつあるが、国の機関等にあっては、調達の際に合法木材を明確に指定している機関は、必ずしも多くはなかった。また、民間企業においては、一部に積極的に購入している場合があるが、まだ特定の企業に限られている現状にある。

(提言)

合法木材供給システムを維持発展させるためには、供給側に合法木材の実需が見えてくることが決定的に重要であり、国の機関等によるグリーン購入の徹底とともに、民間需要者に対する何らかのインセンティブを検討する必要があり、以下の事項を実施・検討すべきである。

@グリーン購入法による調達を進めるため、国・地方自治体・建築業者・建材納入業者を対象に、合法木材調達マニュアル(チェックリスト)等により一層の普及を図る。

Aまた、民間に広く合法木材の調達を進めるためには、優良な調達企業等の情報を収集し、公表するなど企業イメージを高めるための、表彰等の措置を検討する。

B以上のほか、合法木材調達に対するインセンティブとしては、例えば、a カーボンフットプリント、木づかいの環境貢献見える化など、木材・木質材料利用の環境貢献の基準に合法性を位置づけること、b補助事業等の実施の際に合法木材使用を明確にすること、c 工事入札評価方法の中に合法木材の利用が反映されること、d 税制等の優遇措置を導入すること、等が考えられ、今後、幅広く検討する。

4.供給者側への証明制度の定着と証明された木材・木材製品の安定供給方策について

(現状認識)

供給事業体数は増えたものの、全体として、まだまだ合法木材として供給されている木材・木材製品の量は少ない。そのこともあって、需要者から合法性の証明書の要求があってから、後追い的に証明手続きをとり、証明書を発給している例も見受けられる。特に輸入材については合法性が証明されている事例が少ない。

(提言)

合法木材供給システムが普及するためには、合法木材が普通に市場に流通し、いつでもどこでも調達できる状況になることが必要である。そのために、以下のような取組が必要である。

@合法木材供給事業体は、常時合法木材を供給出来るような体制を整備する

A体制の整った供給事業体のPR 体制(製品紹介ページなど)を整える

B優良な供給事業体等の情報を収集し公表PR して企業イメージを高めるための措置をとる

C輸入材の合法証明手続きについて情報公開を進めるとともに、産地ごとのリスク評価に応じた証明方法も検討する必要がある。

5.終わりに

これまで、違法伐採総合対策協議会の下で関係者が精力的に議論を行い、ようやくここに、その結果を提言として取りまとめることができた。

この提言内容に沿って、まず第一に、グリーン購入法の導入、ガイドラインの作成など、この仕組みを主導してきた関係行政機関において適切な対応が図られるとともに、木材・木材製品の供給、需要、消費に関わる広範な関係者においても更なる取組が進められ、合法性等の証明された木材・木材製品の一層の普及・利用拡大に努めていただくことをお願いしたい。

ここにまとめた提言は現時点での現状認識と改善の方向性を示すものであり、今後さらに得られた知見や経験に基づき、よりよい合法性等の証明の確立に向けて議論を継続していくことが必要である。

我々が目指す目標は、違法伐採を地球上から根絶し、合法木材のみが市場に流通する世界を作っていくことである。この大きな目標に向かって、関係者に更なる連携と努力をお願いするとともに、関係行政機関はもちろんのこと、民間に根ざした取組として益々広がりを増していくよう期待する。

(引用文献)

  1. 違法伐採対策推進国際セミナー2007Uin 横浜サマリーステートメント-信頼性と普及可能性のある合法木材証明システムを求めて-
     http://www.goho-wood.jp/event/event5-report.html
  2. 日本のGoho-wood の今後の展望と国際連帯(吉野正芳)G8 サミットに向けたGohowood 円卓会議報告書収録
     http://www.goho-wood.jp/topics/doc/conference_report.pdf
  3. 平成18 年度違法伐採総合対策推進事業総括報告書及び関連報告書
     http://www.goho-wood.jp/kyougikai/report_h18.html
  4. 平成19 年度違法伐採総合対策推進事業総括報告書及び関連報告書
     http://www.goho-wood.jp/kyougikai/report_h19.html